【書評】ミサキラヂオ(瀬川深)【67冊目】

概要

田舎の港町「ミサキ」で、水産加工会社の社長はラジオ局開設を決意する。「ミサキラヂオ」は、何故か時々音が遅れて届くのだった・・・。

あまりに表紙の絵が素晴らしくて買ってしまった。

いったいこの不思議な小説は何なのだろう?

他の瀬川作品と同様、農業、分子生物学、音楽、パラグアイ、モテない青年といったモチーフがちりばめられているが、この作品はカオスを極めている。

20人ほどの主人公の織りなす群像劇なのだが、ストーリーが在るようで無く、テーマが在るようで無く、主人公が在るようで無く、でもやはり無いようで在る。

社長や天満翔平や録音技師、小説家、農業青年、音楽教師、ドクトルといった陰のあるキャラクターは凄いリアルで、まるで本人がそこにいるかのようだ。

地の文章は面白いとしても、テーマは何なんだろう?群像の織りなす共時性と、あり得ない時間の逆転、不合理による救い?どうしてこの舞台はいつの時代かわからない、「田舎」なのだろう?

この小説は何なんだろう?正直、一回読んだだけではまだわかっていない気がする。

舞台は全然違うのに、この不思議な世界はまるで現実感がなくて、「どこにもない国」に通じるものがあるような気がする。

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