【書評】レヴィナス 何のために生きるのか(小泉義之)【62冊目】

概要

哲学者レヴィナスを分かりやすく解説した本。

ユダヤ人哲学者で、ホロコーストを生き延びたレヴィナス。高名な哲学者だが、その本は何を言っているのかさっぱりわからない。なので、こうした入門書は貴重である。

小泉氏は、あえて「何のために生きるのか」というテーマに絞ってレヴィナスを解説してくれている。口調がとても分かりやすい。しかも、哲学の結論は先延ばしにしたくないと言い、初めの章に結論を書いてくれている。非常に親切だ。

人は「生きなければならない」という「契約」を何者かと結んでこの世に産み落とされる。そのため、簡単に自殺出来ない。だから、苦痛に満ちた人生を「何のために生きるのかわからないまま」生き続けなくてはいけない。

だから人は生きる目的について考えるが、毎回「エゴイズム」という「自分のために生きる」という結論に行きつくようにできている。つまり、

  • 健康
  • 幸福
  • 平穏
  • モテる・性欲の充足
  • 仕事への満足
  • 成功
  • 地位
  • 名誉
  • ライフワークの成就

といった様々な「人生の目的」は、全て自分のために何者かを享受することに過ぎない。

この目的のうちどれを達成しても、人間は人生が依然としてつらく、また別の「人生の目的」を求めてさまよってしまうのだ。これが「自問自答」の状態、「逃走の欲求」である。自問自答をしている限り、永遠にさまよう運命は変えられない。

この悲しい運命から救われる方法はあるのだろうか。どのように生きることがその答えなのだろうか。

レヴィナスの答えは「他者」である。他者のために生き、配偶者のために生きる。そして生殖を通じて、人類のために生きる。これらは、自分のための人生ではない。自問自答ではない。自分のために生きるという「契約」のもと、それが他者の役にも立っているようにして生きる。それができたら、生殖を通して他者のために生きる。または、死ぬことを通して他者のために生きる。

つまり、「人生の目的」とは、労働・生殖・死において、たまたま他者や人類のためになるように生きることと結論している。この結論を補強するために、契約、逃走、他者、顔といったレヴィナスの概念がある。

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