【書評】山の絵本(尾崎喜八)【99冊目】

概要

山で作った紀行文。

1892年生まれの著者が、1933年頃から書き始めた紀行文。41歳ごろからだろうか。

尾崎氏の文章は、まさに絵のように、山の景色がありありと浮かんでくる。風や清流、遠くに見える峰までも蘇ってくる。魔法のような文章である。

冒頭の40ページは蓼科山のみだが、文末に山の名前の索引がついていて、100以上の山名が登場する。最低100回以上違う山に行っていることがわかる。

自然描写も見事だが、人間描写もおもしろい。著者が、心の底から山に生活する人々(農業や放牧)に憧れつつも、詩人としての無産階級的生活を捨てきれず、寂しさを感じている心情が分かる。

我々山好きの都会人も、いざ山への移住を考えると、山では仕事がないと頭を抱える。同じ心情なのではないだろうか。

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