【書評】仕事は楽しいかね?(デイル・ドーテン)【7冊目】

概要

飛行機が大雪で止まった夜の空港で、男は赤ら顔の老人と出会う。老人は男に問う。

「仕事は楽しいかね?」

この本の最も本質的なメッセージは、

「実験に失敗はない」

だろう。

一つのことを極めるという考え方、また人生には「目的」がなければならないという考え方には穴がある。なぜなら、人生は「失敗」の連続だからである。

一度失敗した人間は、もう一つのことを極めることも、当初の人生の目的も果たすことはできない。だから無気力な大人になる。世間は夢を持つことを推奨するが、プロ野球選手になれなかった球児には冷たいのだ。

著者は、「2つ目のキャリアで成功した人たち」は驚くほど多いという。

  • エリツィン大統領は工事の現場監督を続けていた だろうし、
  • あるメジャーリーガーはサッカー選手を続けていた だろう

と言う。そして、これらの人々は「ゴールポイゾニング」に侵されず、生涯実験をやめなかったから成功できたのだと言うのだ。

人生とは「一つのつまらないこと」がずっと続いていくことだ。その一つが仕事であると思っている人は多いが、本当はつまらないのは、「飛び跳ねないこと(実験の欠如したクリエイティブさに欠ける働き方)」なのだと著者は言う。

閉塞的な状況を打破する糸口を探す勇気を与えてくれる本だ。

【書評】ザ・ゴール2(エリヤフ・ゴールドラット)【6冊目】

概要

「ザ・ゴール」の主人公は成功を収め、ユニコ社の多角化部門の社長として腕を振るっていたが、突然会社の売却が決定したのだった。残された時間は3ヶ月…

全体最適化の理論を現実に適用する際に役立つツールを伝授する内容。

この本で紹介されているツールは主に2つ。

  • ネガティブブランチ

だ。

雲の目的は、「コンフリクトに集中すること」。コンフリクトを図示して、共通理解を作る。また、どこを攻めるかについての議論を相手と協力して行うことができる。

ネガティブツリーの目的は、「根本原因を見つけること」。すべての問題をツリー状に繋げることで、部分最適化を避け全体最適化を行う。特に、根本原因を見つけ、それが他のすべての問題を引き起こしていることを、他人に納得させるために使われる。

この二つのツールで会社の売却は防がれ、子供も言うことを聞くようになる。コメディみたいだが、エンターテインメント性が高いとも捉えられるだろう。意外に子供を説得するシーンのほうがわかりやすいのだ。

【書評】人間とは何か(マーク・トウェイン)【5冊目】

概要

「人間は機械にすぎない」 – そう主張する老人と青年との議論の物語。青年は何一つ反論できずに、最後には老人の人間機械論が勝利を収めることになる。

人間は外力と本能に突き動かされて盲目(無目的)に漂う憐れむべき存在だという基本的な思想はショーペンハウアーの哲学と同義であり、自由意志を否定する点でも共通している。しかし、ショーペンハウアーは認識の力で意志を否定できるとしたのに対し、こちらは理性は心に勝てないとし、悪の行為を選べない動物は遥かに人間以上だとしている。

この本のあまりの説得力に老妻はショックを受け、娘たちもおびえあがったという。妻の死後になるまで出版は許可されず、わずか250部の私家版しか出版されなかった。そのような本を、今我々は簡単に入手して読むことができる。

【書評】学問のすすめ(福澤諭吉)【4冊目】

一万円札の絵柄である福澤諭吉の書いた学問のすすめは、国民の160人に一人が読んだというベストセラーであった。現在に換算すれば、70万部である。

冒頭は次のようである。

天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らずなどと言われている。しかし、世の中を見渡せば、それがデタラメであることはよくわかる。世の中は不平等なものだ。

ではなぜ世の中には富めるものと貧しきものがいるのか。その差は、学んだか、学ばなかったかにある。

仕事には、給料の高い仕事と、低い仕事がある。その差は、出来る人が少ない仕事ほど給料が高くなり、誰でも出来る仕事ほど給料が安くなるからだ。だから、給料が高い仕事につくためには、学問、それも仕事に役立つ実学を学んだほうがいい。

このように、学問のすすめは誰でもわかる文章で書かれている。福澤諭吉は、召使に何度も読み聞かせ、少しでも分からないと言われればすぐに書き直したと言われている。

【書評】仕事の人間関係がうまい人が成功する(ロナ・リヒテンバーグ)【3冊目】

仕事の人間関係がうまい人が成功する

原題はIt’s not Business, It’s Personal。はっとさせられる良いタイトルである。

この本は、社会に出て自分の能力を発揮してみて、ある程度までは行ったものの、転職などして、今までの同僚とも、学生時代の友達とも疎遠になり、はたと自分が独りで闘っていることに気付いた、という人にオススメしたい。

この本は9つの成功法を紹介するという体裁で書かれているが、それに囚われず、本書を貫くエッセンスを少しだけ紹介する。

「成功」とは何か

本書が目指しているのは、「長期的な」「並外れた」成功である。

「人間関係」とは何か

人間関係とは二人の人間の関係の集合だが、本書が議論するのは、ビジネスの人間関係である。それは、本書の16ページ目冒頭に次のように定義されている。

二人の人間のうちどちらかが、将来的にも二人の間でビジネスが行われることを希望し、二人の間のビジネスがどちらか一方の生活に重大な影響を及ぼすと考えている状態

この一文から、いかに著者が「ビジネスの人間関係」について思索を巡らしてきたかがわかるではないか!

「ビジネスの人間関係」が「成功」につながる理由

本書のエッセンスは37ページの次の言葉に表れている。

人間関係が業績を生み、業績が人間関係を生む

成功とはこの繰り返しである。

著者は人間関係は量より質だと強調する。それが業績を生む人間関係だと。

【書評】ある出稼石工の回想(マルタン・ナド)【2冊目】

ここに、誰も知らない本がある。「ある出稼石工の回想」だ。

この本は、現代日本に生きる我々に何の関係も無いとも言える。だが、虐げられた労働者が、どう運命を、世界を変えて行ったかという、普遍的なストーリーが書かれた本だ。

石工でありながら高度な教育を受け、危険な仕事をよる9時までこなした後、11時まで文盲の労働者のために学校を開く。仕事は真面目で、才気に溢れ、人の何倍も稼ぎ、父親の莫大な借金を繰り上げ返済してしまう。

非常に優れて魅力的な人間でありながら、出稼ぎの身の上から、妻には1年に1度しか逢えないナド。

彼は政治家になり、知事に上り詰め、世界を変えようとするが・・・

人間臭く、限りなくリアリティに溢れていながら、力強く運命を開く冒険譚だ。このまま埋もれてしまうには、あまりに面白い。

【書評】成功学キャラ教授 4000万円トクする話(清涼院流水・Illustration/西島大介)【1冊目】

「4000万円得する話」である。

誰でも4000万円は欲しい。なら読まない理由があるだろうか!?

だがこの本が売れたという話は聞かない。4000万円得したいのにみんな読まないのだ。みんな、騙されたくないのだ。

でも、騙されたとして何の損があるんだろう?この本は傑作だ。誰か信じて読んでみて欲しい。