§10 知

「知る」とは、悟性が直観した表象を、理性の機能により概念のなかに固定することである。

「知」と「科学」は人間の長所だが、その確実性は、概念が再現可能であることによる。

だから「知る」とは、ある概念を認識し、自由自在に再現しうるまでに精神の力のうちにおさめることなのだ。

これは人間のみが可能なことである。意識がある(=表象を精神のなかで再現することが出来る)動物も存在するし、記憶力に長けた(=概念を記憶できる)動物も存在するが、概念を形成する理性の力が無いので、彼らは本当の意味で「知る」ことは出来ない。

理性の概念形成以外の能力は、概念間の論理操作を行う能力のみである。

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