§40 魅惑的なもの

崇高なものの反対は、魅惑的なものである。なぜ私がこう定義するかというと、魅惑的なものは意志を肯定するものだからである。崇高なものは、意欲を消滅させる。

例えば、芸術であっても、食物そっくりの静物画は食欲を起こさせ、裸婦像(古典的なものを除く)は性欲を起こさせる。こうした意欲を起こさせる性質は、芸術本来の目的であるイデアの伝達とは真逆である。だから、芸術においては、魅惑的なものは避けられなければならない。

また、意志を刺激するという点では、見ただけで嘔吐を催させるものもまた「魅惑的」である。これが消極的魅惑である。

»目次に戻る(意志と表象としての世界)

Bookmark the permalink.