ショーペンハウアーの哲学

§4-5 3つの名誉

市民的名誉とは、平和的な社会に仲間入りするための名誉で、一度でも蛮行を起こせば失われてしまう。

誹謗や怪文書によっても失われてしまうから、法律により取り締まられている。誠実と信用が大事である。と書くとつまらないが、そもそも名誉とはそれを担う人が例外的人物でないことを表すのである。老年者の名誉も、長い間の市民的名誉の維持に信用がある。

職務上名誉とは、ある職務を司る人が、そのためのあらゆる能力をそなえ、任務を果たしているという評判である。違反者を厳しく告発する自浄作用もこの名誉を支えるのに不可欠である。官吏、医者、弁護士、教員、大卒者、軍人がそれぞれの職務上名誉を担っている。

最後の性生活上名誉は、女性の名誉と男性の名誉とに分かれている。

これは明白で、未婚の女性に対してはまだ男性に身を許していないという評判、既婚の女性に対しては1人の男性にしか身を許していないという評判である。この名誉も自浄作用で守られているが、結婚制度を維持しようという力が違反者を厳しく糾弾するのである。何故なら結婚という割に合わない取引は、信用のみに支えられているからである。

君主だけは、国益の定めた相手としか結婚出来ないから、可哀想だということで妾の制度が維持されてきたが、妾のほうも愛し合っても結婚出来ずに不幸であり、例外として黙認されている。

さて、男性の性生活上名誉は女性に対する労働組合的なものに過ぎず、姦通を厳しく罰しようというルールであり、これが出来なければ男性社会から不名誉を着せられる、というだけである。しかも情夫は処罰されないものなので、消極的な起源をもつ名誉だとわかる。