ショーペンハウアーの哲学

§68-2 家畜の救済

意志の否定を行う人の肉体は健全であり、生殖器を通じて性的衝動を表明してはいても、もはや新しい命を生み出そうとは思わない。自発的な純潔こそ、救済の第一歩である。世界中がこのような人ばかりになれば、人類は滅びてしまうだろう。

それでよいのだ。

認識主観である人類が消滅すれば、この世界が消滅したに等しい。なぜなら、世界は表象であり、主観のないところに表象は無いからである。

人間の消滅は、次に動物界に影響を与える。人間は動物を利用する代わりに、救済を与えなければならない。万物は人間によって神のもとへ引き上げられねばならない。人間は万物に対する司祭である。その慈悲は世界の苦悩を自分のものとすることからもたらされる。よって、人間は万物のための犠牲である。