ショーペンハウアーの哲学

§69 自殺について

自殺は意志の否定ではなく、むしろ肯定である。

自殺する者は、自分の苦悩から逃れようとしているのだから、個体化の原理に囚われたままである。

苦悩から逃れるための自殺は、苦悩の大きさが、意欲の大きさから起こっていることを意味する。彼は、他に意志を肯定する手段を失ってしまったので、自殺を選ぶのである。

いかなる倫理学も、自殺を思いとどまらせることは出来ない。自殺者には、意志の否定に気付くための認識の力が欠けているからである。

自殺では、意志そのものを殺すことは出来ない。認識のみが、種族を廃絶させることができる。