ショーペンハウアーの哲学

§16-2 ストアの倫理 (第一巻最終章)

ストア派の目指す幸福とは、「苦痛を避けて生きること」である。
そのため、ストアの賢者が有徳的な振る舞いをしたとしても、
それは目的に対する手段であり、単なる副作用に過ぎない。

ストアの開祖ゼノンはこのような生き方を「一致して生きる」と呼んだ。

しかし、「苦しむことなく生きること」には矛盾が内在している。
ストア派の教えには、苦痛を避けるための自殺さえ織り込まれているのである。

ストア派での平静・知足(足るを知ること)は人間の本性と相反したものであるから、
我々はそのような概念を具体的に思い描くことさえ出来ない。
そのため、ストアの賢者の生き方は生気を感じさせない模型人間のように感じられる。