ショーペンハウアーの哲学

§55-3 習得された性格

習得された性格を得るとは、自分を理解することである。経験的性格と叡智的性格は不変だが、自分についての明晰な理解を概念の形で結晶させることには二つの大事な利点がある。

ひとつは、何かを成し遂げることである。歳の市に行った子供のように、興味あるもの全てに引き寄せられてふらふらしていれば、何も成し遂げることは出来ない。自分の素養を知ることで初めて、人は他の全てを諦め、集中出来るのである。

ふたつめは、自分自身に対する不満から解放されることである。 それは、自分自身をわきまえず、誤った自信や思い上がり、欠点を変更可能だという不毛な希望を持つことから生まれるからである。