ショーペンハウアーの哲学

§57-1 休み無い死

現在が手をすり抜けて過去になっていくことは、死への休むことの無い移行だ。

歩行は絶え間無い転倒の阻止である。活気は絶え間無い退屈の延期である。食事も睡眠も暖をとることも、死の延期である。

この不断の生への努力によって苦痛が生まれる。

人間は苦痛と退屈の間を往復する振り子運動だ。さらに生殖の義務と、外敵とが人間を脅かす。

そして、最期には必ず死との闘いに敗北する。人生は難破を目指して、岩礁と渦巻きに満ちた海を航海することである。