§2-1 システム同型性

第2章のトピック

  • 専門分化への批判
  • システムの同型性
  • システムの定義

専門分化への批判

どの学問分野も、必然的に、データ・技法・理論が肥大することで、専門化が進行していく。その結果、あらゆる学者が狭い殻の中に閉じこもって、他の分野に無関心になっている。これでは、システム同型性に気づくことは出来ない。

システム同型性

同じような問題と考えが、なぜか、広く様々なレベルの分野に出現している。

例えば、ロトカ・ヴォルテラの生物統計学は、化学の反応速度論とほとんど同じ構造である。しかし、それらが扱う相互作用の実体と力は、異なったレベルのものである。

また、開放システムの理論(指数法則の理論)は、動物の生長現象にも個体群の理論にも経済学の理論にも登場するし、サイバネティクスや情報理論の理論も同様に多くの分野に登場する。

このように、広く様々なレベルの分野の問題を、ひとつの理論で説明できる。この理論を、一般システム特性の理論と呼ぶ。逆に、それぞれの系は、システム同型性を持つと呼ぶ。システム同型な系は、同じ数学的法則で説明できる。

また、数学的法則が存在しない、非定量的な問題にも、同型性が考えられる。生物と、人間社会は「超有機体」として同型である。

このことを知れば、科学のいろいろな分野で行われてきた再発見の悲劇を防げるはずだ。

システムの定義

こうした「システム」は、「相互作用しあう要素の複合体である」と定義できる。

§1-3 システム理論の方法論

システム理論は、モデル化と数学の組み合わせであり、以下の方法論が試みられてきた。

  • 数学(解析学・微分方程式・力学系)
  • コンピュータシミュレーション
  • コンパートメント理論
  • 集合論
  • グラフ理論
  • サイバネティクス
  • 情報理論
  • オートマトン理論
  • ゲーム理論
  • 決定理論
  • 待ち行列理論

§1-2 システム理論への批判

システム理論への批判

  1. システム理論は、数学がどんな分野にも応用できるという、自明の理以上のものではない。
  2. システム理論の表面的な類似を捉えた比喩は、実際の相違を覆い隠し、偽りに導く。
  3. システム理論は、「還元不能性」を掲げて分析的なアプローチを批判するが、分析的なアプローチが役立つことは生物・化学・物理で実証済みである。

ベルタランフィによる反論

システム理論とはパラダイムシフトであり、既存の科学の否定が目的ではない。

システム理論の主張は、

既存の科学の盲点に着目し、そこに解釈と理論を提供しよう。
また、特殊科学よりも高い一般性を持つ解釈と理論を提供しよう。

ということである。よって1.も3.も的外れな批判である。

(私には、ベルタランフィは、2.への明確な反論は出来ていないように思える。)

§1-1 システム理論の広がり

序論のトピック

  1. システム理論の広がり
  2. システム理論の歴史
    • システム理論への批判(記事)
  3. システム理論の方法論のリスト(記事)

まず今回は、システム理論の広がりの章について見ていきます。

システム理論の広がりについて

  • 動力工学から制御工学へ
  • コンピューターの出現
  • 既存の学問の限界

動力工学 vs 制御工学

動力工学とは、蒸気機関や電気機械といった、「大量のエネルギーの解放」を扱うための工学である。

制御工学とは、小さな装置によって過程を支配するための工学である。

蒸気機関や自動車といった単純なシステムを作るためには、動力工学のみで十分だった。しかし、より複雑なシステムを作るためには、制御工学が必要だ。

例えば、弾道ミサイルや宇宙船を作るために、人類は機械との関係性の問題や、財政的・経済的・社会的・政治的問題に直面してきた。

コンピューターへの期待

「システム・アプローチ」とは、目的を定め、その実現のために最高の効率と最小のコストで済む解決法を発見するアプローチである。

このような計算は人間には不可能であり、コンピューターの登場によって可能になった。

(このようなコンピューターへの過度な期待は、バックミンスター・フラーの著書にも見られます。)

既存の学問の限界

物理学は三体問題以上の複雑な問題に対しては無力である。しかし、現実の物体はどのように動けばよいかを知っているのだから、異なるアプローチを取れば真実が明らかになるはずである。

  • 物理学
  • 心理学のS-Rモデル
  • 精神医学
  • 社会科学
  • 歴史学

においても同様の限界とシステム理論の発展が起こっている。