システム理論の目的は、以下の3つである。
- 還元主義とは別のアプローチで、世界の統一的な理解を実現すること
- 一般科学者の育成
- ユートピアの実現
これらについて、1つずつ検討していく。
世界の統一的理解
結局、還元主義は、異なるレベルの理論を、より低いレベルに還元することは出来なかった。生物レベルのものを物理学で完全に説明することは出来ず、行動レベルのものを生物学で完全に説明することは出来ず、社会レベルのものを行動学で完全に説明することは出来ない。
しかし、ここのレベル内での法則と、レベル間に共通する法則を見つけることは出来る。
世界の統一的理解のためには、全てのレベルのものを物理学に還元するという、不可能で、おそらく無駄である、行き過ぎた望みを捨てる必要がある。代わりに、異なるレベル間のシステム同型性を基礎におくべきである。
一般科学者の育成
還元主義は行き過ぎた専門分化をもたらす。それが、お互いに無関心な専門馬鹿を生んできた。
一般システム理論が、各分野を超えた基本原理を発展させることが、一般科学者育成のための教育的基礎となる。
ユートピアの実現
一般システム理論は制御工学の理論を端緒としているので、一般システム理論をマスターした学者が、社会を制御することで、人類の幸福が実現できると考えるものもいる。しかし、著者はこれに反対である。
この考えは、哲人為政者というプラトンの理想政治にルーツをもつものである。だが、こうした考えで実現される未来は、よくてせいぜいオルダス・ハクスリーの「素晴らしい新世界」、悪くてジョージ・オーウェルの「1984年」のようなものだろう。
現代の全体主義は、大衆暗示、人間の獣性の解放、条件付け、思考制御など科学的な武器を駆使してきた。
システム理論は、人間と人間行動と社会のシステム同型性・オーガニゼーションとしての独自性の理解を可能にする。人間の個人として内発的に湧き出る価値が尊重されるべきであり、そのような個人の達成がシステムの要素にならなくてはならない。