赤い表紙に黒い題字の三十頁ほどのリーフレット。
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自分だけでおこなう革命
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生に「無反省」「無自覚」なまま、子供を産んだものは、全て、愚かな自己擁護者であって、巨大な生の中の自己についての一片の想念だに彼の脳裡を掠めすぎたことはない。
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自己と自己の家族の愚かな肯定者、自足者である彼は、常に、ただひたすらひたむきの保存者であって、自他ともに顚覆(てんぷく)し、創造する革命者たり得ない。
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ただ「自覚的」に子供をもたぬもののみが、「有から有を産む」愚かな慣例を全顚覆し、はじめてまったく自己遺伝と自然淘汰によってではなく、「有の嘗て見知らぬ新しい未知の虚在を創造」する。
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生の全歴史は、子供をもたなかったものの創造のみによって、あやうくも生と死の卑小な歴史を超えた新しい存在史の予覚をこそもたらし得たのである。
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従って、この命題を厳密且至当に辿りゆけば、ひとりの子供だにまったく存しなくなった人類死滅に際しておこなわれる革命のみが、本来の純粋革命となる。子供をのこしてきたこれまでのすべての「非革命的」革命なるものを転覆する純粋革命こそ、これまで絶対にあり得なかった不思議な知的存在者をついに創造し得た唯一の栄光をもった最後窮極の革命にほかならない。
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[…] 尾木恒子、黒川・安寿子と議論「自分だけでおこなう革命」 […]