ショーペンハウアーの哲学

§57-2 不変の苦痛とそれへの対処

絶え間無い苦痛が人間の本質だから、逆に何をしても苦痛の総量は変わらないということを認識すれば、心は慰められる。苦痛は偶然に左右されない必然だ。

苦悩を追い払うことは出来ない。苦悩は絶えず形を変えてやってくる。性衝動、愛、嫉妬、羨望、憎悪、不安、名誉心、金銭欲、病気…。

しかし、我々が苦痛に対してイライラするのは、それを偶然だとか、自分の運が悪いせいだとか思うことによるのである。

苦痛は必然であり、あらゆる形をとって絶えずやって来ると分かっていれば、我慢が出来る。死や老いに我慢がならなくて始終イライラしている人がいないのも、それが避けようのないものだからである。

普通の人は苦痛を外的原因によるものと考え、いつも苦痛の言い逃れを見つけようとしている。これはあたかも、自由の身でありながら、奴隷に戻ろうとするような行為である。