持続的な幸福はあり得ない。なぜかと言うと、幸福とは「苦痛が無いこと」だからである。
だから、幸福や目標を達成しても、享楽によっても、単に苦悩や願望から解放されただけである。むしろそこには退屈がやってくるのだ。
苦痛が積極的なのに対し、幸福は消極的である。だからこそ長続きする幸せなどというものはあり得ない。絶え間なく苦痛が生まれることは人生の本質だからである。
積極的な幸福が存在しないことは、どんな詩も劇も、幸福を得ようとして格闘し努力し戦闘するさまを描くだけで、永続的で円満な幸福それ自体を描くものではないことからもわかる。主人公が幸福を探り当てるや否や、幕を下ろしてしまうしか、文学にできることは無いのである。また永続的な幸福を描こうとした芸術、例えば田園詩、牧歌は、退屈である。
そもそも宇宙は空虚であり、全ては最終目標も無ければ終点も無い努力である。