世界征服者が、並外れた悪心と、並外れた精神力とを組み合わせて、世界征服を成し遂げ、万民に苦悩を与えたとする。すると、全ての民衆が、彼等が受けた総和に等しい苦痛が、その悪人に降りかかれと望むようになる。この感情の正体は実はエゴイズム(§61 エゴ)の一種である。
これに対し、反逆者がこうした独裁者を暗殺し、自らは断頭台に消えるのは、無私の心である。彼は、未来の大悪人たちを、威嚇しようとして殉じるのだ。しかし、このような英雄も、時間という幻影(§3 根拠の原理 – 時間の原理)に惑わされ、永遠の正義(§63-1 永遠の正義、永遠の罪)を見誤っている。