クーラースクリーン vs タブレット


サイネージが増加傾向

面白い記事を見ました。近年、看板の代わりにビルの屋上に設置された巨大モニター、駅のサイネージ、タクシー内のタブレット・・・どこもかしこも画面が増え続けています。

これは、小売店の冷蔵庫(cooler)の扉にサイネージ(screen)を一体化させてしまおうという試みです。

現時点では中身が見えない、欠品がわからないなど非難轟々のようですが、画像認識AIを専門としてきた自分としては寂しくも感じます。そこで、改めてその価値を考察してみたいと思います。


クーラースクリーンとは?

クーラースクリーン社のプロダクトは、オフライン店舗で広告を見せるハードウェアです。

棚前で広告を見た人は、本当に対象商品を買いやすくなるのでしょうか?

なるほど、確かに公式のプレスリリースによると購買頻度が2.2%上昇したようです。

実際の光景を思い浮かべてみましょう。

お酒を買いたいとか、喉が渇いたなどの漠然としたニーズを持つ消費者が棚前に来たとします。

通常ならガラス越しに商品が見えて、その中から選択し、決心してから扉を開けるでしょう。

その時にセールスリフトする機序は、ガラス越しでは他社の商品を選択する可能性が高かった人が、主として単純接触効果によって、対象商品を選択するということになります。

「ガラス越しでは他社の商品を選択する可能性が高かった人」

これがセールスリフトに比例するので、トップシェアを取れていない商品が対象商品になりやすいと考えられます。

ここで疑問が生まれます。果たしてあらゆる商品がセールスリフトするのでしょうか?これによって売上が下がる商品が出てくるのではないでしょうか?セールスリフトは、トータルの売上が下がる分を賄うに十分なのでしょうか?

要するに、「本当に儲かるのか?」というのが素直な疑問です。ここでは特に、「サイネージに比べて儲かるのか?」を考えてみたいと思います。

タブレットを利用したより小さいサイネージが、いろんな会社から出ています。

例えば、elecom社のタブレットサイネージ

クーラースクリーンと、このようなより小さいサイネージとの優劣はなんでしょうか?

  1. 画面の大きさ
  2. 音声の大きさ
  3. ターゲットユーザー以外への効果
  4. 他の商品の視認性
  5. シズル感への影響

画面の大きさ

クーラースクリーンは画面が大きいので、商品の通常CM(15〜30秒)一辺倒では飽きが来るかも知れません。大画面により、タイアップ動画など、目を惹くコンテンツを配信できます。

音声の大きさ

タイアップ動画としてありがちなのは、アニメやアーティスト(MusicVideo)です。コンテンツの訴求力をあてにするとすると、音声は相当うるさいかもしれません。

タブレットは出力が小さいため、幸か不幸か音声もそれほどうるさくはありません。

ターゲットユーザー以外への効果

店頭のコンテンツ配信は、基本的にターゲティングができません。ターゲティングは基本的にはデモグラフィックなどの特性を4種類以上に分解して行われます。不快感を感じる・もしくは無関心なユーザーが過半数であると考えられます。

他の商品の視認性

広告配信中は他の商品が見えないので、最悪、その人が見たら買いたくなったであろう商品が見せられない可能性があります。

すると、通常に比べて購買率は下がるのではないか?と予想されます。

シズル感の低下

酷暑の中たどり着いた、冷房の効いた店内。水滴がついたガラスケース。

ついつい糖質制限のことも忘れてラムネ瓶を手に取り、レジに持っていってしまう・・・

排熱する巨大なスクリーンでは、こんなシズル感が失われてしまうと考えられます。

私は冷たい飲料の夏場での購買率は下がるのではないか?と考えています。


今回は全体的にクーラースクリーンの分は悪いという結論となりました。

リテールの本質を、考える。リテマガでした。

投稿者プロフィール

mat-hリテールテック研究家
松﨑 遥(男性)
東京大学・大学院にてカオス複雑系の研究に従事。在学中にITベンチャーに参画し、ソフトウェア開発(WorksApplications)、ビッグデータの機械学習(Recruit)、画像認識AI(PKSHA)、マネジメントに従事。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です