要約
私は凡庸な精神の持ち主であるにも関わらず、短い生涯のうちに、科学の真理の探求において非常に満足の行く成果を修めた。そして、科学者こそが、人間の最も重要な職業であると信じている。
それは、この「方法」によって私が自らの知識を増してきたからである。
しかし、私自身が間違っていることもありうる。
だから、まずこの序説では、自分がどういう道程をたどってきたかを示し、自分の生涯をあたかも一枚の絵に描くように再現して、それで各人がわたしのたどった道程について判断をくだせるようにしたい。
またこれに対する世人の意見をこの方法に取り入れ改善できれば最高である。
このように、私の目的は、単に私の努力の内容をお目にかけることである。
本来、ひとに掟を授けることにたずさわるものは、自分がそれを授けてやる相手よりも有能でなければならない。しかし、私の方法には従わないほうがいい部分もあるだろう。
読者は私のこの率直さに満足してくれるだろうと期待している次第である。
解説
デカルトは懐疑主義であり、自分の方法を開陳したいという気持ちと、自分の方法を疑う気持ちの間で揺れ動いている。
そのため、次章は、しばらくデカルトの人生の話が続くのである。