§2-1 統一性の原理

要約

1619年、三十年戦争に参加するために私はドイツを訪れた。
冬が始まって、私はある屯営に留められた。
そこでは気晴らしになるような話相手も、心を乱すような心配事や情念もなかったので、私は一日じゅうひとりで暖房に閉じこもって思索にふける余暇を持った。
最初に考えたことのひとつは、

「複数人によりなされた仕事は、
1人によってなされた仕事の完成度には及ばない」

ということであった。これは具体的には以下のように対比される。

1人の建築家が建てた建物 多数の建築家が協力して建てた建物
1人の技術家が自己の空想にまかせて引いた要塞都市 小さな城下町が段階的に発展して出来た大都会
唯一神が法令を出した真の宗教状態 半未開民族からゆっくり文明化して、
徐々に法令を作った民族
1人の人間が眼の前の事柄について下す
単純な推論
多くのことなった人々によって徐々に形成された学問
生まれてその時から自らを自らのみにより導いてきた理性 色々な欲望や教師によって、
相互に矛盾する忠告を与えられ続けた理性

 

解説

デカルトが学問を棄てた理由は、「自分自身という研究対象を、明証的に考察したいから」であると§1で語られたことを思い出さねばならない。

ここでもまた、自分一人で編み出した明証的な法則は、統一性の意味で学問にまさるとデカルトは説いているのである。

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