はじめに

ニーチェ

ニーチェ(1844年10月15日 – 1900年8月25日)はドイツの哲学者である。

わずか24歳でバーゼル大学の教授となった天才でありながら、「悲劇の誕生」(目次)を出版したことにより孤立し、病気のせいもあって、35歳で辞職に追い込まれる。ヨーロッパ各地を転々と流浪しながら、数多くの本を著した。

そして1889年に路上で発狂し、1900年に死を迎えた。

永劫回帰

ニーチェの思想は多彩で脈絡が無いカオスな集合体である。その中で最も有名で、最も衝撃的なのは、「永劫回帰」の思想だろう。

ある夜デーモンが現れて、身を切るような君の孤独のうちに忍び込んで、こう言ったとしたらどうだろう?

「お前はこれまで生きてきたこの人生を、もう一度、
さらには無限回にわたり繰り返して生きなければならないだろう。

そこには新しいことは何一つ無く、感じたことや考えたこと全て、大事から小事にいたるまでが、
そのままの配列と順序で回帰してくるのだ。

―この蜘蛛も、梢を漏れる月光も、この瞬間も、このおれ自身もそっくりそのまま!

この問いに対し、ニーチェは「自分の人生を愛する」と答えている。これは究極の生の肯定であり、ショーペンハウアーの生への意志の否定の理論とは真っ向から対立する結論である(ニーチェは若いころ、ショーペンハウアーに深く傾倒していた)。ショーペンハウアーや仏教の考え方では、輪廻の輪を断ち切り、この世に二度と生まれてこないことが最終目的だからだ。ニーチェは永劫回帰を証明したのではない。天啓のようにひらめいたのだ。そして、あまりの衝撃に、永劫回帰の概念は、はじめ人々の記憶に、やがて歴史へと深く刻み込まれたのだった。

ディオニュソス

ニーチェの思想はどれも論理的には意味が分からない。いや、深遠なところでは繋がっているのだが、あまりに飛躍が激しく、常人の頭でついていくことは出来ないのだ。

ニーチェはディオニュソス的なものの信奉者である。デュオニソスは原始的な集団熱狂、陶酔、忘我の状態である。

ニーチェの思想はダイナマイトのように爆発し、現実世界のヴェールを引き剥がして、宇宙の深遠を読者に垣間見せてくれるだろう。ニーチェの思想は熱狂の渦で読者を巻き込み、陶酔の世界に浸らせてくれるだろう。

ニーチェは、自ら狂人になった。

アンドレ・ジッド, 1869年 – 1951年

 

私は人間ではない。 私はダイナマイトである。

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ, 1888年

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です