偉人の才能は、旧世代では微弱で忘れられていた力が後世に突如として現れたものである(§9 噴火)。
そうした力を身のうちに感じるものは、旧世代による抵抗と戦うことになる。勝利すれば偉人として大成し、負ければ風変わりな変人となる。
しかし、これは旧世代より幸せなことである。過去にそうした力を持っていても、ありふれていて、当時の旧世代にとって脅威でなかったので、単に無視され、抵抗を受けることもなく、偉人として大成することも無かったのだろう。
偉人は古い民族から生まれる。異才をもつ人は、保守的な民族の精神との戦いを通じて、偉人へと大成するからである。
解説
ニーチェは、高貴な人間、偉人は、自ら苦境を獲得すると述べている。旧世代との戦いが、その苦境のひとつである。
1ページに満たない短い章だが、ニーチェの超人思想にとって重要なことが書かれているのを見落としてはならない。