すでに持っている者にとっては所有欲は軽蔑の対象であるが、持たざるものによって、同じものが「愛」と呼ばれる。
しかし、所有は飽きるものである。どれほど風光明媚な土地も、3ヶ月過ぎれば飽きるものだ。(ニーチェは旅好きである)何処か遠くの海岸が、我々の所有欲を掻き立てる。我々は、絶えず新奇なものを取り入れていないと喜びを感じられないのだ。
さて、所有欲の最たるものは男女の愛の場合で、愛する男は世の中全てから財宝を守る龍となる。愛はエゴイズムと同じものなのだ。
しかし持たざるものは、愛をエゴイズムとは対極の概念に作り変えてしまった。有り余る所有に恵まれたものは、それを荒れ狂う魔物に形容したのに。
ただし、二人の人間の所有願望が、お互いでなく、新しい理想に向かう場合がある。このような愛の名を、友情という。