§5 パーキンソンの法則の改訂

納期設定を誤らせてきたのは、「パーキンソンの法則」と呼ばれる一種のユーモアである。

「与えられた仕事をするのに、時間はいくらあっても余ることはない。」

これはつまらない仕事をだらだらする場合には当てはまるかもしれないが、高い品質を実現することにやりがいを覚えるエンジニアには当てはまらない。

エンジニアが職務を遂行出来ない理由はむしろ、

  • 能力不足
  • 自信不足
  • 人間関係

などであり、これらはどれ1つとして厳しい納期によるプレッシャーでは解決しない。

管理職が口を出すのも意味がない。チームワークとは、チームのメンバー同士が助け合うことだからだ。管理職の仕事はそうした風土を醸成することだ。

ちなみに、パーキンソンの法則を否定する実験結果が1985年に出ている。

以下の実験は

エンジニアは自分で立てた目標値を達成するためにこそ努力する

ということを裏付けている。

目標を立てた人 生産性(平均)
エンジニア 8.0
管理職 6.6
二人で相談 7.8
第三者が決める(アナリスト) 9.5
目標なし 12.0

確かにエンジニアが1人で決めるのが成績が良い。また、4番目の列から、より正しい目標を専門家が決めることでより向上させる可能性があることは否定できない。

管理職の成績が一番悪いのは、彼らがより間違った目標、つまり厳しい納期を設定するからだ。不合理な納期を設定されることで、エンジニアのモチベーションが地に墜ちるのである。

そして、最高の生産性をたたき出すのは、誰も彼らに口を出さない環境である。

つまりパーキンソンの法則を改訂するとしたら、こうなのだ。

組織の管理業務をするのに、時間はいくらあっても余ることはない。

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