§12 まずはドアから

オフィスでの生産性を上げるためには、「ドア」(個室)を復活させ、「呼び出し放送」を撲滅することが必須である。なぜなら、生産性は各エンジニアのフロー状態によって決まるからである。

しかし、非力なプログラマーにそんな改革が出来るのだろうか?まずは、みんなが集まって意見を出し、オフィス環境に不満を持っているのは自分だけでないことを理解することである。

次に立ちはだかるのは、次のような反論である。

  • プログラマは「インテリ」であり、オフィスが賑やかでケバケバしくなったところで影響されない。
  • BGM(バックグラウンドミュージック)を流せば騒音問題は解決する。
  • 個室はコミュニケーションを阻害し、生産性や活気を失わせる。

ケバケバしさについて

外見にこだわるあまり、生産性を低下させるのはばかばかしい。騒音・プライバシー・割り当て面積にこそコストを掛けるべきだ。

BGMについて

1960年代に、コーネル大学で「生産性と音楽について」というテーマで一連の実験が行われた。

コンピューターサイエンス学科の学部学生を音楽を聞きながら勉強するのが好きな学生と、静かでないと手のつかないグループに分けた。

音楽の影響が認められ無かった要素

完成に要した時間 正確さ

これらは左脳に影響されるため、右脳への負荷が影響しなかったと考えられる。

音楽の影響によりパフォーマンスが下がった要素

パターンの発見能力

仕様書には書いていないが、入力データを左に2桁シフトし”100″で割って出力する部分は、何もしないことに等しかった。

これに気づいた学生もいたし、気づかなかった学生もいたが、重要なのは、気づいた人の大部分が無音室側の学生だったことだ。

つまり、BGMは右脳の独創的な思考の飛躍を阻害するのである。

活力あるオフィス

「一人で作業をすると生産性が低下する」という反論はそうかもしれない。しかし実験では、2人による作業が最も労働時間比率が高いことが分かった。よって、2~3人部屋にするのがよい。そうすれば、より意味のあるコミュニケーションだけが生まれる。

オフィスの管理のあるべき姿は、十分なスペース、静かさ、プライバシーを確保してやり、あとはおのおのに「究極のオフィス環境」を作らせることだ。最も作業効率の良いオフィスは人によって異なるもので、画一的にコピーできるものではないからだ。

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