ラエトライルとは、アンズの種を絞って採れる無色の液体で、末期がんの治療薬としてメキシコで売られているものである。
IT業界でも、生産性を劇的に改善するという「技術的ラエトライル」のカモにされる人が後を絶たない。
両者の共通点は、証拠を見ずに解決策に飛びつく点である。個別に反論していこう。
- 生産性を飛躍的に向上させる方法がある。
→すでに効果が出て誰もが気づいているはずだ。 - 他の管理職は2倍以上の改善成果を挙げている。
→見せ方が上手いだけだ。全体像を見れば、2倍改善していると言えるはずがない。 - 技術の進化においていかれてしまう。
→それは問題の一部だ。人に関する問題にも目を向けよう。 - プログラミング言語を変えれば、生産性は飛躍的に向上する。
→コーディング工程は5%くらい改善するかもしれないが、それは問題の一部だ。人に関する問題にも目を向けよう。 - バックログの多さから逆算して、生産性を2倍にする必要がある。
→最初に楽観的に計画しただけだ。むしろ、金食い虫となってしまった悪いバックログを切り捨てるべきだ。 - 全てを自動化すれば生産性は飛躍的に向上する。
→エンジニアの最も大切な仕事は人とのコミュニケーションであることを忘れている。 - 部下にプレッシャーをかければ、2倍働く。
→やる気をなくして、生産性が落ちるだけだ。
トム・デマルコの元上司シャロンこそ、本物の上司だった。彼女は人を働かせるのではなく、人を働く気にさせてくれた。(この感動的なエピソードについては、是非原文を参照のこと!)