§3-2 財産の使い方

例えば自己の才能によって財産を築きあげたとして、その金は使って快楽を得るべきだろうか?そうではない。財産は事故から知的生活を守る保険・防壁であるべきである。

自己の才能によって金を儲けた人は、必ずうぬぼれる。ここに、「芸術家」、「手職者」、「商人」、「先祖から金を相続した者」の4種類の人がいると考えてみよう。

芸術家

芸術家の才能はたいていはかないものである。すぐに才能は尽き、金も尽きる。そうしているうちに金を使い果たし、破滅する。

手職者

手職者は才能が衰えても、ものが作れなくなるところまではすぐにはいかないものである。さらに彼は人も雇えるから、お金を使っても金を使い果たすところまではいかない。

商人

商人にとっては才能ではなく、お金そのものがさらに利益を得るための手段であるから、お金を快楽のために使いすぎることはない。

相続者

相続者は、資本には一切手を付けず、利息のみによって暮らす。(“ごくつぶし”については次の章で述べる。)

このような、金の用途の違いは何から生まれるのだろうか?それは、困苦の経験の有無である。

貧しい時代を知っている者、例えば芸術家は、貧しくても何とか生きていけることを知っている。彼らは貧しさを恐れない。そのため、お金をあればあるだけ使ってしまう。

逆に、生まれた時から富裕の身であるもの、例えば相続者は、まだ見ぬ困苦を、空気が無くなるのと同じように恐れる。こうして、彼らはたいてい外から嫁いできた妻には資本を継がせず、利息のみを継がせる。そして、子孫にのみ資本を継がせるものである。

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