科学とは、
体系的な知識である。
それは、AからBを導くと言う論理の上下関係をもつ知識の集合だが、
プラトンのイデアのようにひとつの「普遍」が
全ての直観の上にあるというのに似た単層構造ではなく、論理による階層構造である。
公理からあらゆる定理を導く構造になっているが、
数ある知識の中からどれを公理とするかは自明ではない。
しかし、知識の中でも「明証」は直観的に理解できる。
明証的なものを、論理により証明しようとするのは、
松葉杖で歩くために脚を切り落とすような本末転倒の行為である。
あらゆる定理のなかで公理とすべきものを抽出するのは「判断力」である。
科学者は判断力によって最も明瞭な公理系を選ぶべきであり、
科学は明証の上に立つべきである。