§20 意志は無根拠である

意志は意欲を引き起こすが、それは随意運動ではない。
随意運動は動機によって引き起こされるが、動機が規定しているのは、特定の場所で、特定の時間に、特定の内容を意欲させるということで、一般的な意欲を引き起こすことは出来ない。

しかし、「生きたい」という意欲は、場所にも時間にもよらず引き起こされる。これは意志が引き起こす意欲である。
われわれがなぜ「生きたい」と一般的に意欲するのかは、動機から解明することは出来ない。
このように、一般的な意欲は、動機に支配されていないのである。

同様に、身体の組成・成長・維持について生理学的に説明し、身体の運動を有機体における原因に還元しても、身体の組成・成長・維持がなぜ存在するのかは説明できない。
なぜ身体の組成・成長・維持が一般的に引き起こされるのか。
有機体における自然法則は客観化された意志、すなわち意志の現象だからである。

この傍証は、身体の各部の合目的性である。
例えば歯・喉・腸は客観化された飢餓であり、生殖器は客観化された性衝動であり、手・脚は様々な目的に対応し、個人の体系は客観化された個人の性格である。

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