表象を直観的なものと抽象的なものに分けると、前者は「物自体の表象」と「根拠の原理」、後者は「概念」と呼ばれるものである。概念を形成する能力は理性と呼ばれる。人間をあらゆる動物から区別しているのは、理性の有無である。
経験が原因で直観的な表象が生じるのではなく、表象の認識そのものが、経験である。表象の認識とは、「物自体の表象」を、「根拠の原理」というフィルタを通して認識することである。根拠の原理とは、認識形式の法則 – つまり、主観の認識を制限する法則である。
この例は、まず時間と空間の原理である。これらは、あらゆる経験から独立して直観され、あらゆる経験に制限を加えているのである。
時間の原理は、認識が、継続する一瞬の形態をとるという原理である。これが、「時間という認識形式」である。
空間の原理は、物質の部分と部分が、位置的に継続するという原理である。これが、「空間と言う認識形式」である。
我々のあらゆる経験が、これらの形式でなければ認識不可能であると言う制限を加えられている。だから、「表象としての世界」は、
- ヘラクレイトスには「流転」
- プラトンには「イデアの像」
- カントには「物自体の偶有性」
- 古代インドでは「マーヤーのヴェール」
として、本当に存在してはいない仮象の世界として軽視されてきた。
§3 根拠の原理1・2 – 時間・空間
§4 根拠の原理3 – 因果性
§- 根拠の原理4 – 動機