意志はカントの理論における”物自体”であり、プラトンのイデアは段階的な”意志の直接の客体性”である。
カントの理論の要点はこうである。
「時間、空間、因果性。これらとこれらが可能にする全ての数多性と生成・消滅は、現象に属し、”物自体”(真の実在)ではない。
ゆえに、これらからもたらされる全ての経験も真の実在ではない。
われわれが自我だと思っているものも、経験を通した認識であるから、われわれが自我だと思っているものでさえも真の実在ではない。」
プラトンの理論の要点はこうである。
「われわれが知覚する様々な事物は、真の実在ではない。
それらは絶えず生成しているが、存在してはいない、幻燈に移された影のようなものである。
生成も消滅もせず、真に存在しているものは、影の原像、”イデア”のみである。」
カントもプラトンも、全ての表象が非存在であることを主張している。
ここに例えば一匹の動物がいた場合、プラトンは「動物のイデアの影」であると言い、カントは「動物の本体を認識するには経験ではなく超越的認識が必要」と言うだろう。
しかし、プラトンのイデアとカントの物自体には違いがある。