「何の」イデアを認識するかにより、ものの美しさは変化する。
高位のイデア、つまり人間の本質が題材である芸術を認識する場合は、イデア自体に美の味わいの泉がより多く存在する。逆に、低位のイデア、例えば建築物という人工物に表現された、重力と剛性のイデアを認識する場合は、純粋認識状態に美の味わいの泉がより多く存在する。
高位のイデアとは何か。意志の激しさや恐ろしさ、満足、挫折、悲劇が人間の本質である。とくにキリスト教絵画では、意志の自己廃棄がテーマとなる。
ここからの章は、さまざまな芸術を一つ一つ検討することになる。