人間の美しさは
- 姿(種族の特徴)
- 動作
- 性格
に基づいている。
動作の美しさは、「優美さ」である。動作が意志の欲求を最短経路で淀みなく実現するときが、最も優美である。つまり動作の優美さとは合目的性である。逆に、動作が意志に一致しない場合、優美さを欠いている。動物の動作にも優美さがある。
芸術においては、1.姿の描写と3.性格の描写は両立せねばならない。1.に偏れば無意味なものになり、3.に偏ればカリカチュア(風刺画)になってしまう。例えば彫刻は1.の美を目指しているが、美は幾分かは3.性格によって変容されねばならない。
芸術においては、3.性格の描写は1.種族の特徴の描写を毀損してはならない。この例は、酔っぱらいのシレノスやサテュロスを醜悪に描きすぎて、人間とは思えないほどになってしまった場合である。
同様に、3.性格の描写は2.動作の優美さの描写も毀損してはならない。この例は、性格を表現するために不自然な姿勢や動作を取らせることにより、意志と不整合になってしまう場合である。
彫刻においては1.の美と2.の優美さに重点がある。これに対し、3.性格の描写には絵画に分がある。次章(§46 ラオコーン像)では、ラオコーンを描写した絵画では悲鳴を表現できるが、ラオコーンを描写した彫刻では悲鳴を表現できないことについて論じる。