人生は苦痛に満ちている。
イデアを見るときだけが、人生のこのうえなく愉しい一面であり、またそれだけが人生の唯一の無邪気な一面である。
ただし、イデアを見ることが出来るのは、天才芸術家のみである。
しかし彼もまた、天才であり他の人々より優れているがゆえに、孤高の苦しみを味わうことになる。彼は人々の中では異質であり、誰も分かり合えるものがいない。
すると、一層イデアを見ること – 世界の”意志”の純粋な認識のみが、彼の人生の目的となっていく。しかし、それは一瞬苦悩を忘れさせてはくれても、人生という不断の苦悩の前には、永久の解脱にはなりえない。
やがて彼は芸術によって高められた力を基にして、厳粛に、諦念をもって、「意志の寂滅」を実現することになるだろう。
ラファエロによるこの聖カエキリアの肖像は、芸術家から聖者への移行の象徴である。