人間に自由意志は存在しない。しかし、認識により、意志の否定をする自由だけは残されている。
表象としての世界は、隅々まで根拠の原理に支配されている。根拠の原理からの独立性は、意志としての世界にしかあり得ないのである。
意志の肯定の先にある世界は、必然性に支配されている。思い通りにならないことが多く、苦悩も大きい。この究極は、動物の、弱肉強食の世界であり、地獄である。
しかし意志の否定の先にある世界では、我々は動機から解放される。意欲が無いからである。意欲が無くなると、我々の性格までもがひっくり返ったように感じられる。これが教会の言う「再生」、「恩寵」の力である。