§42 労働と退屈

普通の人間は報酬を目当てに労働する。しかし、芸術家、思想家、狩人、冒険家、遊び人といった人々は、仕事の喜びのために、多額の実入りに見向きもしない。

彼らは喜びのためなら、苦痛を感受する。喜びを味わえないことには無精で、たちまち貧困で退屈になる。しかし、退屈は独創的な人々にとっては、必要な「凪」なのだ。彼らは不快な凪を辛抱し、次の風のために耐え忍ぶ。なんと、凡人には望み得ない境地だろうか?!退屈さを追い払おうとするのは、凡人の証拠である。

§40 高貴な外見の払底

兵士の上官に対する畏怖が 、労働者の雇用者に対する畏怖より大きいのは、大衆の奴隷根性が原因である。大衆は、より高貴な外見の者に命令されたがる。産業界の雇用者は、狡猾で貪欲で人の不幸につけこむ人間の屑くらいに思っているのだ。これが軍事が産業より高貴である理由である。

§36 末期の言葉

皇帝が死ぬ時、仮面をかぶってきた人生を告白する。アウグストゥスも、ネロも、末期の言葉は俳優の駄弁であった。

ティベリウスは沈黙のうちに死んで行った。彼こそは本物だったのだ。しかし、彼が持ち直そうとした時、周囲のものは気を遣って、枕で彼を窒息させたのだった。