【西瓜糖の日々】リチャード・ブローティガン【126冊目】

1964年に発表されヒッピーブームを作り上げた小説。
iDEATH(自我の死)と呼ばれるコミューンでの平和な生活の話。
アイデスの人々は西瓜を育てて、その果汁を煮詰めて西瓜糖を作ります。アイデスではコンクリートもガラスも全て西瓜糖で作られています。川が流れ鱒が泳ぐ。夜になると無数のランタンが灯りパートナー同士が静かに愛し合う平和な世界です。
でもなぜか住民は本を燃やして燃料にしています。

アイデスの外には<忘れられた世界>があり、旧世界の異物を採掘可能になっています。
でもアイデスの人間は無知なので、そこで本を発掘しても燃料にしてしまうのです。
しかし、主人公の恋人のように少数の人々だけが旧世界の秘密を次第に理解し、アイデスの存在に疑問を抱くようになります。

昔はアイデスにも<言葉を喋る虎>がいて、人に死を与えていました。
しかし、アイデスの人々は食べられるのが嫌で6匹いた虎を全員殺してしまいます。
そのため、アイデスでは無気力で無目的な集団生活が永遠に続いています。
自我を無くしたまま淡々と生きながらえる生活は、死んでいるのと変わりません。

なので、アイデスから抜け出す方法は自殺する以外にありません。
そこで、主人公の友達の親戚と、主人公の恋人たちは集団自殺してしまいます。
しかしアイデスの人々は彼らがいなくなったことになんの感情も感じず、淡々とその後も生き続けるというお話です。

私はアイデスから脱出した人々の方に共感を覚えました。

ブローティガンは本書を書いた20年後に拳銃自殺してしまいました。

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