概要
廃村で一人取り残されて死ぬまで暮らす話。崩壊の詩情
黄色い雨は「時間」。それは止まない。記憶の火を消し続ける。
いっぷう変わった本のオススメ(3冊達成!)
山で作った紀行文。
1892年生まれの著者が、1933年頃から書き始めた紀行文。41歳ごろからだろうか。
尾崎氏の文章は、まさに絵のように、山の景色がありありと浮かんでくる。風や清流、遠くに見える峰までも蘇ってくる。魔法のような文章である。
冒頭の40ページは蓼科山のみだが、文末に山の名前の索引がついていて、100以上の山名が登場する。最低100回以上違う山に行っていることがわかる。
自然描写も見事だが、人間描写もおもしろい。著者が、心の底から山に生活する人々(農業や放牧)に憧れつつも、詩人としての無産階級的生活を捨てきれず、寂しさを感じている心情が分かる。
我々山好きの都会人も、いざ山への移住を考えると、山では仕事がないと頭を抱える。同じ心情なのではないだろうか。
旅はよい
TABILABOの創業者の本ということで買ったが、悲しいほど内容が薄っぺらい。なんかジョブズを神格化していて、神であるジョブズがインドに行けと言っているから世界を旅しよう、みたいな感じ。「ジョブズがパソコンを発明した」「ジョブズがトイストーリーを作った」というような、悲しいほど初歩的な事実誤認まである。
基本的には、各章、名が売れてる友達の書いたものを引用して終わり。
中でも2章3節(“常識をずらす”)なんてすごい。有名な2ちゃんねる発祥のコピペが貼ってあって、「この話には考えさせられる。」と書いてあって終わり。10年前から知っとるわ!これが旅の33の確かな価値のうちの1つ、なんだってさ・・・。こういうことをする著者だ。ぜひ、買う前にこの本のクオリティを見立てる試金石として、立ち読みしていただきたい。
ゴミを33個集めても、ゴミが出来上がるにすぎない。しょせんTABILABOは、意識高い系の海外志向に過ぎないのだと思う。
メキシコの田舎町。海岸に小さなボートが停泊していた。
メキシコ人の漁師が小さな網に魚をとってきた。
その魚はなんとも生きがいい。それを見たアメリカ人旅行者は、「すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの」 と尋ねた。
すると漁師は
「そんなに長い時間じゃないよ」
と答えた。旅行者が「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。おしいなあ」
と言うと、
漁師は、自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だと言った。「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」
と旅行者が聞くと、漁師は、「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…ああ、これでもう一日終わりだね」
すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。
「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、
きみにアドバイスしよう。
いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。
それであまった魚は売る。
お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。
その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。
やがて大漁船団ができるまでね。
そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。
自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。
その頃にはきみはこのちっぽけな村を出てメキソコシティに引っ越し、
ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。
きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」漁師は尋ねた。
「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」
「二〇年、いやおそらく二五年でそこまでいくね」
「それからどうなるの」
「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」
と旅行者はにんまりと笑い、「今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ」
「それで?」
「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、
日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、
子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、
夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、
歌をうたって過ごすんだ。 どうだい。すばらしいだろう」