【書評】モナドの領域(筒井康隆)【100冊目】

概要

神の上位の存在”GOD”が宇宙の真理を語る

記念すべき100冊目は、この「モナドの領域」にしようと思う。

筒井康隆は昔から好きで、他の作品だと「敵」「家」「乗越駅の刑罰」が好きだ。

しかしこの「モナドの領域」はぶっ飛んでいる。

初版発行は2015年の12月だから、80歳の時に書かれたようだ。

GODが人間に向けて問答・公開討論をやる話、それだけと言えばそれだけなのだが、本当に神と話しているような気分になってしまうところが見事だ。宇宙の形について「あらゆる場所が中心で外周が存在しない円」だと語る。

なるほど・・・

そういわれると、「位相空間の開集合で距離が入っていないものかなぁ」と思わされて、人間が数学により神に近づいているのかという疑問が思いつく。するとすぐさま、「人間はエッセをまとい神のコピーの知性によりエッセを理解するのみだが、私はエッセンティアでありエッセを必要としない」と言われる。

なるほど・・・

神との対話を描いた本にはほかに「神狩り」が想起されるが、勝るとも劣らないできなのではないかと思う。

神狩り

なんにせよ、読む価値はある小説である!

【書評】戦闘妖精雪風/グッドラック/アンブロークンアロー(神林長平)【78冊目】

概要

人間の主観と異なる形式の認識主観を持つ存在との闘いを描くSF。3部作未完

30年にわたり戦闘機を送り込んでくる異星体「ジャム」。実はその正体は、人間とは全く異なる認識方法を持つ存在であった。

人間はジャムと必死に戦っていたつもりだった。しかし、実はジャムが敵として認識し、コミュニケートしていたのは、軍の人工知能のほうで、人間は正体不明の付属物と認識されていたに過ぎなかったのではないだろうか・・・。

さらに、人類がジャムの本拠地だと思って戦っていたフェアリィ星が実は・・・。

こんなストーリーは常人には絶対考え付かない!

1・2巻はほぼ伏線に過ぎず、3巻が本領発揮である。ジャムと同じ認識形態に引きずり込まれ、主観が崩壊した世界を実に見事に描き出している。並行宇宙を「リアルに」「言語として」「機械による認識と並行に」認識する世界でもがきながらジャムと闘わなければならないのだが、その圧倒的な恐怖感が伝わってくる。

【書評】神狩り(山田正紀)【32冊目】

概要

神と闘う小説。

この小説はすさまじい。「神との戦い」は中二病業界の永遠のテーマだが、これほどリアルな神がかつてあっただろうか。神を見たことがないのにリアルとは変な表現だが、この小説の敵である神はかつてなくリアルとしか言いようがないのだ。

話の運び方も面白い。

冒頭で神に敗れる(と暗示される)ヴィトゲンシュタイン。傲慢で嫌われ者の天才言語学者の主人公。

遺跡に残された謎の記号<古代文字>。連想コンピュータ(現在の言葉でいえば『人工知能』だが)を駆使して謎を解くと、2つの論理記号と、13重の関係代名詞からなる言語であることが判明する。それが意味するのは・・・?

謎の組織、米軍基地、武装した学生・・・

この作品が執筆された時代背景もあいまって、傑作に仕上がっている。なんと、これは氏のデビュー作なのだそうだ。山田氏はこれを上回る作品を生み出せなかったと評する向きも多いようだ。