概要
廃村で一人取り残されて死ぬまで暮らす話。崩壊の詩情
黄色い雨は「時間」。それは止まない。記憶の火を消し続ける。
いっぷう変わった本のオススメ(2冊達成!)
山で作った紀行文。
1892年生まれの著者が、1933年頃から書き始めた紀行文。41歳ごろからだろうか。
尾崎氏の文章は、まさに絵のように、山の景色がありありと浮かんでくる。風や清流、遠くに見える峰までも蘇ってくる。魔法のような文章である。
冒頭の40ページは蓼科山のみだが、文末に山の名前の索引がついていて、100以上の山名が登場する。最低100回以上違う山に行っていることがわかる。
自然描写も見事だが、人間描写もおもしろい。著者が、心の底から山に生活する人々(農業や放牧)に憧れつつも、詩人としての無産階級的生活を捨てきれず、寂しさを感じている心情が分かる。
我々山好きの都会人も、いざ山への移住を考えると、山では仕事がないと頭を抱える。同じ心情なのではないだろうか。