【書評】砂の本(ホルヘ・ルイス・ボルヘス)【79冊目】

概要

幻想短編小説集。

29の短編が収録されている。この本は全ての短編が傑作なのだが、特に気に入ったものについて書き記しておきたい。

  • 「会議」
    秘密結社「会議」はメンバーで無いものが地球上に一人もいない、史上最大の会議である。その首謀者の最後の生き残りによる回顧録が始まる・・・。
  • 「三十派」
    キリスト教系の邪教「三十派」。彼らは蓄財を禁じ、廃墟に住み、裸体で暮らすという。ある修道士が彼らの真の目的を知り、最期に書き残そうとする・・・。この話は設定も優れているが、5ページで完結するところも天晴!
  • 「鏡と仮面」
    王が詩人に詩を依頼する。詩人は1年に1度詩を献上し、大成功をおさめた。しかし3年目の年、何かが起きてしまう。
    「頌歌は出来上がらなかったのか」「いいえ、確かにできました」詩人は悲しげに答えた。「願わくば、主キリストがそれを禁じたまえばよかったものの・・・」
  • 「円盤」
    “オーディンの円盤”とは何なのか?
    「これがオーディンの円盤じゃ。片側しかない。この世に、片側だけしか持たぬ者は、他にひとつもない。これがわしの手にある限り、わしは王なのじゃ」
  • 「砂の本」
    「彼が言うには、この本は『砂の本』と言うのです。はじめのページもなければ終わりのページもない。ページの数は無限だ・・・」
  • 「仮面の染物師メルヴのハキム」
    常に仮面で顔を隠している男が、預言者となり絶大な権力を手にし・・・

 

【書評】薔薇の名前(ウンベルト・エーコ)【17冊目】

概要

中世ヨーロッパを舞台にした推理小説。

まだ聖書が修道僧により手で書写されてコピーされていた、我々には想像もつかない時代が舞台である。

ウンベルト・エーコは高名な言語学者であり、想像もつかないようなとてつもないトリックが散りばめられているのが魅力である。

特に、迷宮好きな人間にはたまらないだろう。世界で最も面白い推理小説といっても過言ではないかもしれない。