【書評】コンサルティングの悪魔 日本企業を食い荒らす騙しの手口(ルイス・ピーノルト)【95冊目】

概要

コンサルティング業界でパートナーまで上り詰めた者の後悔・懺悔録。

「深海、南極大陸、ピラミッド、月!」

MBAを持っていないのかとプレッシャーをかけられ、激昂して著者が叫んだ言葉。

「嘘をつく、盗む、騙す」

特に有望な若い候補者を試すために、著者が採用面接で投げかけた質問の言葉。

私が知り合ったコンサルタントは、パブリックなデータソースを利用し、「正攻法」で仕事をする人たちだったと思われるし、それほどの悪人もいなかったと思う。しかし残念ながら、著者のほうがそういった人たちの万倍も仕事ができるし、遥かに魅力的であるように思われる。

嘘をつく、盗む、騙す。海底開発と日本に興味を持ち、日本鋼管で貧乏生活を送っていた著者に、転機が訪れる。コンサルタント1年目で、著者は立派な産業スパイとなる。そして、半年ごとに、信じられないような成果を信じられないような方法で上げていく。痛快である。

賢く、何にも洗脳されずに自分の頭ですべてを考え、多言語を操り、魅力的で、異性にモテ、「真に人生を楽しむ方法」、ナイトライフの過ごし方を知っており、しこたま飲んでも翌日にはそれをおくびにも出さない。出会う人間を全て仲間にし、吸血鬼のように全てを奪い取る。

しかし、段々、何かが壊れていく。7年目に達するころ(260ページ)には、完全に壊れてしまう。

【書評】稼がない男(西園寺マキエ)【77冊目】

概要

幸せはお金じゃない。結婚でもない。48歳フリーターカップルの歩んだ歴史。

久々に感動してしまった。

  • ヨシオ
    「稼がない男」。早稲田を出て留学、大手広告代理店に勤め、稼ぐことは誰かからお金を奪うことと悟り、稼がない人生を選択した。芯が通った人物。
    人のつながりを大切にすることができる。
    幼く自己中心的ではあるが、マリエに対する行動が純粋な愛であふれている。
  • マリエ
    主人公。恋愛も仕事もうまくいかない。
    ヨシオが好きだが、結婚や子供を諦めきれない。

二人の人生が、バブル崩壊・リーマンショック・東日本大震災という節目で語られ、どうやって低所得(月収10~15万円)のまま必死に切り抜けてきたかが語られる。

この二人が絶対的にいい人だというわけじゃない。でもこんな生き方は全然アリだし、何より芯が通っている生き方に思える。

マリエがヨシオに惚れるのはわかる。ヨシオの生きざまはカッコいいのだ。実際、MBAエリートの竜太郎をはじめいろんな人に一目置かれているようだ。

最後にヨシオがフレデリックを引用するので、「確信犯のヒモかよ!」と突っ込みたくなるが、冷静に考えれば、ヨシオがマリエに金品を要求した描写は一回もない。矜持を持って生きているのだ。フレデリックとして生きるには、人並みではない覚悟が必要なのだ。

この人しか出来ない生き方に、感動させられた。

【書評】会社が嫌いになったら読む本(楠木新)【50冊目】

概要

こころの定年が来てしまったら、どう生きていけばよいのだろう。

著者は大企業にいたが、47歳でうつ病を発症。本来の定年年齢よりさきに、「こころの定年」が来てしまったことに気付く。気付けば周りもみな、こころの定年という問題に直面していた。大学に入り、彼はこころの定年についての研究をまとめることを決意、200人の転身成功者にインタビューを行い、卒論をまとめた。

必ず聞かれるのが、次の質問だそうだ。

転身に成功すると、年収は上がるのですか?

転身によって「必ず年収は下がる」というのが著者の調査結果。しかし、会社にいることで、人間はお金や数字でしか人生を測れなくなってしまう。だから、会社員は必ず上の疑問を口にするのだという。

著者は人生は「いい顔」をして生きられるかどうかであり、いい顔かどうかで成功者かどうかを直感的に判断してインタビューしてきたという。

実例については、この本はいたずらにケーススタディにはならず、クラスタ代表元の7例だけが紹介されている。

【書評】ほとんどの社員が17時に帰る売り上げ10年連続右肩上がりの会社(岩崎裕美子)【45冊目】

概要

ある化粧品ベンチャーが、17時帰宅を徹底させた話。

時間軸は以下の通り。

  1. 広告代理店勤務
  2. 先輩の起業についていき社員1号として入社、取締役となるが、ブラック起業化し自らも退職。
  3. 化粧品会社を起業
  4. 17時帰宅を徹底させることに成功。数値目標も撤廃。
  5. 社員が暇でやりがいをなくし、士気が底に。
  6. 社訓を「挑戦」にし、評価制度を工夫し、社員のやりがいを取り戻した。

成功をアピールしたタイトルと裏腹に失敗の連続で、泥臭く、ともすれば筆者がかっこ悪く見えるくらいオープンに書いてある。しかし、ここまでさらけ出せるのはすごい人だと思う。

実際に失敗はものすごくあったのだろうし、良い環境を用意したからと言って、必ずしも経営陣と社員が一丸となってはいなかったようだ。人の心は難しい。でも、化粧品が良く売れ、会社は拡大した。