概要
美少年ドリアン・グレイは歳を取らず、代わりに肖像画が歳をとって行く。
ドリアン・グレイが罪を犯すたび、肖像画の表情は醜く悪辣に歪んでいき・・・
いっぷう変わった本のオススメ(24冊達成!)
若さのイタサ。最悪の後味
ミステリに見せかけた自叙伝・自白なのでは?と思うほど心理描写がリアル。誰もが体験したことのある、自分のイタサ、自意識過剰、黒歴史、自分から見える自分と他人から見た自分のギャップ・・・が再生され、心理ダメージが半端ない。
これほどの後味の悪い小説はなかなかない。
傑作。
でも、朝井リョウ(何者)が出ちゃったからなぁ、それにはかなわないよね・・・
凡人の美女が破滅する話。
凡人の嫉妬は醜い。美しい容姿と嫉妬の醜さをかねそろえたヘッダは破滅する。
究極の悪は「無能」であるという。ヘッダは無能の極致だ。
周囲に破滅をまき散らす、無能な美女。その強烈すぎるキャラクターは公開当初拒否反応を巻き起こし、名作であるにもかかわらず、批判と拒絶の嵐にさらされた。
しかし、古くならない内容である。現代社会でさえ、こういう醜い人間であふれている。
3000万人が最後の一人になるまでじゃんけんで戦う
じゃんけんは運で決まる。このトーナメントに日本一アンラッキーな中学生が勝ち続けてしまうが実は裏があり・・・?という話。
最終章では舞台裏が語られるのだが。
・・・うーん・・・
これを読み通すと体調が悪くなり、とても虚無的な読後感が味わえる・・・
鳶の会社に、大企業を辞めた28歳女性が転がり込む話
狂気の桜という作品が有名なヒキタクニオ。それに比べるとかなり日常感がある小説になっている。
安定が詰まらなくなって会社を辞めた主人公は、2週間、16時間以上も眠り続ける。そして、その後も無為に一日中テレビにくぎ付けになる28歳女性。母親は彼女を心配し、親戚がやっている鳶の会社にぶち込むのである。
主人公は世間知らずの無能な若造といった感じで魅力がなく、鳶の世界に魅力を感じて読ませる小説だ。
鳶のカシラはインテリ出身のプロレタリアートだが、彼はユートピアを作ろうとしている。実際に努力は実り、東日本イチの技術力を持つ会社と評される。彼と相棒にテロリストのパラソル的なハードボイルドの魅力を感じられるかがこの作品のカギだろう。
そこを28歳の頭でっかち世間知らずがぶち壊しにいくのだ。
さてそのようなこれから面白くなるぞ!というところで、唐突に話は打ち切られる。なんなのであろうか。ポカーンという気分である。
北欧に一人で暮らす「冬の王」の人生の描写。
冬の王は、喜八氏が何度も読み返したという短編小説である。
罪により社会から追放され、篤学としての生活を送り、冷たい海を泳いで健康な肉体を保つ。
隠遁者としての理想の生活がこの上なく美しく描かれた短編である。
青空文庫で森鴎外訳を読むことができる。
ノルウェーの14歳の女の子ソフィーのもとに、見知らぬ哲学者から哲学講義が届く。
世界中、35か国で2300万部のベストセラーになったソフィーの世界は、1991年に出版された。インターネットが無かった時代だ。
この小説は、ミステリー小説でありながら、ギリシャ哲学からフロイトまでをカバーする哲学講義でもある。他に、「薄く広くカバーしてくれる哲学入門書」は数あれど、この本では紹介される哲学者のセレクションが、ミステリーのトリックに密接してるところがユニークだ。
そして、ミステリーとして普通に面白いことが、この本が世界的ベストセラーたる所以かと思う。それに、子供(作者には二人のご子息がある)に対し、哲学的な目覚めをもった人生を歩んでほしいという愛が伝わってくる。
ギリシャ~ルネサンス(デカルトの前)までは、どの本でも得られる知識は同じだろうと思う。具体的には、
しかし、デカルトあたりから、爆発的に哲学が発展したため、何を解説に入れるかと言うセレクションが問われる。この本では、合理主義vs経験主義vsロマン主義を軸にする。
最後に、物語の根幹をなすのが実存主義になる。ここら辺からチョイスが偏ってくる。
確かにショーペンハウアー・ニーチェ・ハイデガー・ヴィトゲンシュタインあたりを出すとメルヘンミステリーとして上手くいかなそうではある。
ブラックユーモアの短編集。
サキはイギリスではO・ヘンリーと並ぶ知名度の短編作家である。
彼の短編は5ページほどで終わるが、必ずどんでん返しとブラックユーモアを含んでおり、まさにそういうのが好きな人間にはたまらないほどの職人技となっている。
この短編集の「開いた窓」は特に見事で、最高傑作に数えられている。