【書評】ソフィーの世界(ヨースタイン・ゴルデル)【90冊目】

概要

ノルウェーの14歳の女の子ソフィーのもとに、見知らぬ哲学者から哲学講義が届く。

世界中、35か国で2300万部のベストセラーになったソフィーの世界は、1991年に出版された。インターネットが無かった時代だ。

この小説は、ミステリー小説でありながら、ギリシャ哲学からフロイトまでをカバーする哲学講義でもある。他に、「薄く広くカバーしてくれる哲学入門書」は数あれど、この本では紹介される哲学者のセレクションが、ミステリーのトリックに密接してるところがユニークだ。

そして、ミステリーとして普通に面白いことが、この本が世界的ベストセラーたる所以かと思う。それに、子供(作者には二人のご子息がある)に対し、哲学的な目覚めをもった人生を歩んでほしいという愛が伝わってくる。

哲学者の採用方法

ギリシャ~ルネサンス(デカルトの前)までは、どの本でも得られる知識は同じだろうと思う。具体的には、

  • (北欧)神話
  • ギリシャの自然哲学 ヘラクレイトス・タレスetc…
  • ソクラテス
  • プラトン
  • アリストテレス
  • ディオゲネス
  • ゼノン
  • エピクロス
  • プロティノス
  • アウグスティヌス
  • トマス・アクィナス
  • ルソー

しかし、デカルトあたりから、爆発的に哲学が発展したため、何を解説に入れるかと言うセレクションが問われる。この本では、合理主義vs経験主義vsロマン主義を軸にする。

  • デカルト
  • スピノザ
  • ロック
  • ヒューム
  • バークリー
  • カント
  • ロマン主義
  • ヘーゲル

最後に、物語の根幹をなすのが実存主義になる。ここら辺からチョイスが偏ってくる。

  • キルケゴール
  • マルクス
  • ダーウィン
  • フロイト
  • サルトル

確かにショーペンハウアー・ニーチェ・ハイデガー・ヴィトゲンシュタインあたりを出すとメルヘンミステリーとして上手くいかなそうではある。

【書評】無茶振りの技術(髙城幸司)【83冊目】

概要

「振り上手」になるためのハウツー本。

目次

  1. 社長だって仕事を振られている
  2. なぜあの人は仕事を抱え込むのか
  3. この「やらされ感」はどこから来るのか
  4. あえて突然、振ってみる
  5. おいしそうな仕事に加工するための7か条
  6. 「何かあったら連絡して」と言ってはいけない
  7. 無茶振り上手になる意味

無茶振りの社会的意義(目立つチャンス、仕事は天下の廻りもの、的な?)や、無茶振りで嫌われるメカニズムを理解することで、それを避け、お互いにWin-Winの無茶振りをできるようになりましょうという本。

ここまで気を遣ったら、もはや普通に人材育成に過ぎない。

つまり世の中で問題になっている「無茶振り」はこの本でほぼ語られていないようなもの。

こんな特殊な『無茶振り』について「のみ」語られても・・・。

仮に「上手な仕事の割り振り方」だったら売れなかっただろうなぁ。

ちょっとタイトル詐欺的な肩透かし感。内容について要約すると「相手の得になるよう渡してあげよう」。

【書評】頭がよくなる本(トニー・ブザン)【28冊目】

概要

マインドマップを世に広めた本。

この本を読むと、たちどころに頭が良くなるのである。

そもそも頭が良いとはどういうことなのであろうか。MECEに分けるなら

  • 生得的に頭脳の性能が優れている。
  • 後天的な要因で頭脳の性能が優れている。

となる。

本を読んで頭が良くなるには、後者でなくてはならず、MECEに分けないなら、

  • 頭脳の使い方を改善する。
  • 頭脳を補佐するツールを利用する。
  • 頭脳を補佐する機械を頭に埋め込む。
  • 頭脳をまるごと他人のものと取り替える。

などと色々考えられるわけである。この本の主張は、「頭脳の使い方を改善しよう」「頭脳をマインドマップで補佐しよう」である。

つまりブレインハックの古典であると言える。

古典がすでにあるのにもかかわらず、みなさんご存知のように、ブレインハックの新刊は出続けている。

これは何かに似ていないだろうか?そう、「ダイエット本」である。

すなわち、この本は一つの市場を切り開いた歴史的な本であり、読んでおいた方がいい。

また、途中に偏差値30からハーヴァードに受かった少年などが出てくるので、あとは、統計を学び、自己責任で有限の時間を生きる覚悟を身につけるべきと言える。

【書評】野村再生工場(野村克也)【26冊目】

概要

野球監督が選手の育て方について書いた本。

書いてある内容がいい。

  • チームワークの重要性
    • 特にエースを育てることの重要性
  • 押し付けではなく自ら気づくことの重要性

チームワーク理論がいい。とにかく「エース」を如何に育てるかに注力するという哲学である。チームワークが大切だから突出した個人を排除するというのがありがちだが、野村監督の理論では、チームワークとは、大多数の凡人が、規範となる突出した個人の真似をしていくことであるという逆の発想だ。

描かれ方もいい。

この手の本は、作者の自伝から始まるものが多いが、そうすると退屈で眠くなってしまいがち、この本では作者の自伝は最終章である。この人は、徹底して他人の目線に立てる人で、だからこそ育てるのが上手いのに違いない。