概要
システム理論学者のピーター・センゲが、システム理論を経営と組織論に当てはめた理論書。
システム思考というのは、個別最適化の逆で、全体を俯瞰して、パターンを見つけるようなプロセスのこと。
伝統的には、問題に取り組むときはそれを細かい要素に分け、コントロール可能な部分に介入する。これは還元論とか、個別最適化とか、分割統治法とか言われている考え方である。
システム思考の場合は、全体を俯瞰してパターンを見つけてから、ボトルネックの部分にコントロール可能な変数がないか探し、介入するという方法をとる。
一長一短であるが、還元論の場合に絶対に解決できない問題が解決する場合があるのと、レバレッジが効いて効率が良い場合があるのがシステム思考の特徴である。
この本は、組織論への応用が主眼だが、本当に面白いのはこのシステムのパターン7種類を説明した部分だ。
組織論
これからの時代の強い組織とは、学習する組織である。
それを構成する要素は、組織の「志」、組織内の「会話」、そして「システム思考」だ。
組織が大志をもつとは、個人の専門性が非常に高くありながら、目指すべき理想のビジョンが共有されていること。
組織の会話は、ビジョンを共通言語として使い、さらに問題に向き合ったものでなければならない。ギャップが正しくとらえられ共通認識にならないと、一丸となって志に向かってテンションを保つことができない。
そして、根本的で効果的に問題にアタックするための武器がシステム思考である。
システム思考
構造的問題のパターンは、次のパターンを持つことが多い。
- 成長の限界(Limits to Growth)
- 問題のすり替え(Shifting the Burden)
このような問題は、ほとんどの人が全体像をつかめないことから起きている。システム思考を共通言語化することで、問題の全体像を共有(Shared Vision/Mental Model)することができる。
まとめ
学習する組織については、理論上発明されたが、コモディティ化はされていない状態で、それを実現するために著者はこの本を書いたという。しかし、こんなに難しい理論が、コモディティ化することなどありえるのだろうか。
たぶんこの理論は難しすぎるのだ。なぜなら、日本語訳は、なんとこの本の本質であるシステム思考の部分を章ごと省略してしまっているのだから。訳者が内容を理解できなかった可能性もあるし、訳者が「一般人には理解できないから飛ばしたほうが分かりやすいだろう」と判断した可能性もある。
とりあえずは、未来ある頭のいい人がこの本を読んでくれることを期待している。