【書評】全日本じゃんけんトーナメント(清涼院流水)【102冊目】

概要

3000万人が最後の一人になるまでじゃんけんで戦う

じゃんけんは運で決まる。このトーナメントに日本一アンラッキーな中学生が勝ち続けてしまうが実は裏があり・・・?という話。

最終章では舞台裏が語られるのだが。

・・・うーん・・・

これを読み通すと体調が悪くなり、とても虚無的な読後感が味わえる・・・

【書評】鳶がクルリと(ヒキタクニオ)【101冊目】

概要

鳶の会社に、大企業を辞めた28歳女性が転がり込む話

狂気の桜という作品が有名なヒキタクニオ。それに比べるとかなり日常感がある小説になっている。

安定が詰まらなくなって会社を辞めた主人公は、2週間、16時間以上も眠り続ける。そして、その後も無為に一日中テレビにくぎ付けになる28歳女性。母親は彼女を心配し、親戚がやっている鳶の会社にぶち込むのである。

主人公は世間知らずの無能な若造といった感じで魅力がなく、鳶の世界に魅力を感じて読ませる小説だ。

鳶のカシラはインテリ出身のプロレタリアートだが、彼はユートピアを作ろうとしている。実際に努力は実り、東日本イチの技術力を持つ会社と評される。彼と相棒にテロリストのパラソル的なハードボイルドの魅力を感じられるかがこの作品のカギだろう。

テロリストのパラソル(藤原伊織)

そこを28歳の頭でっかち世間知らずがぶち壊しにいくのだ。

さてそのようなこれから面白くなるぞ!というところで、唐突に話は打ち切られる。なんなのであろうか。ポカーンという気分である。

【書評】モナドの領域(筒井康隆)【100冊目】

概要

神の上位の存在”GOD”が宇宙の真理を語る

記念すべき100冊目は、この「モナドの領域」にしようと思う。

筒井康隆は昔から好きで、他の作品だと「敵」「家」「乗越駅の刑罰」が好きだ。

しかしこの「モナドの領域」はぶっ飛んでいる。

初版発行は2015年の12月だから、80歳の時に書かれたようだ。

GODが人間に向けて問答・公開討論をやる話、それだけと言えばそれだけなのだが、本当に神と話しているような気分になってしまうところが見事だ。宇宙の形について「あらゆる場所が中心で外周が存在しない円」だと語る。

なるほど・・・

そういわれると、「位相空間の開集合で距離が入っていないものかなぁ」と思わされて、人間が数学により神に近づいているのかという疑問が思いつく。するとすぐさま、「人間はエッセをまとい神のコピーの知性によりエッセを理解するのみだが、私はエッセンティアでありエッセを必要としない」と言われる。

なるほど・・・

神との対話を描いた本にはほかに「神狩り」が想起されるが、勝るとも劣らないできなのではないかと思う。

神狩り

なんにせよ、読む価値はある小説である!