【書評】無茶振りの技術(髙城幸司)【83冊目】

概要

「振り上手」になるためのハウツー本。

目次

  1. 社長だって仕事を振られている
  2. なぜあの人は仕事を抱え込むのか
  3. この「やらされ感」はどこから来るのか
  4. あえて突然、振ってみる
  5. おいしそうな仕事に加工するための7か条
  6. 「何かあったら連絡して」と言ってはいけない
  7. 無茶振り上手になる意味

無茶振りの社会的意義(目立つチャンス、仕事は天下の廻りもの、的な?)や、無茶振りで嫌われるメカニズムを理解することで、それを避け、お互いにWin-Winの無茶振りをできるようになりましょうという本。

ここまで気を遣ったら、もはや普通に人材育成に過ぎない。

つまり世の中で問題になっている「無茶振り」はこの本でほぼ語られていないようなもの。

こんな特殊な『無茶振り』について「のみ」語られても・・・。

仮に「上手な仕事の割り振り方」だったら売れなかっただろうなぁ。

ちょっとタイトル詐欺的な肩透かし感。内容について要約すると「相手の得になるよう渡してあげよう」。

【書評】自分を見つめる心理学(加藤諦三)【76冊目】

概要

自己中心的なナルシシズムと劣等感により、「間違った生き方」をしていることに気づこう。

なんでこんなに自分のことが知られているんだ・・・と思わされる本。

「自分は何者なんだ?」をテーマにした本は多い。でも、こんなに耳に痛いことをズバズバ言ってくれる本があっただろうか。

あなたが悩むことが多いのは「愛されなかったからだ」と言う。

愛されなかったからこそ自信が持てず、周りが皆敵の中で生き残るために、能力と言う武器を磨いてきた。社会に認められ、尊重されるために。

でも、それは実は間違った生き方で、そんな生き方をしても幸せになれないということに、早く気付くんだ。

  • 自己中心性
    「こんなに頑張った自分は偉い」そんな考えには、自分しか出てこない。
    「頑張った自分がなぜ愛されないのか」これを、ナルシシズムという。
    これは本質的には自分だけおいしいところを食べよう、という考えに過ぎない。
    「頑張って支えてくれているみんな」が視界に入っていないのだ。
  • 劣等感
    「力が欲しい。力があれば、みんなが認めてくれる」力を得ても、もっと欲しくなるだけだ。
    成功者が自分を成功したと思えない現象を、偽名現象という。まさにその状態だ。
    「なぜあいつは努力しないんだ」力を求める人間は、弱者に厳しい。
    だから、みんなに認められないのだ。
    「力以外の、多様な価値観」を認められないのだ。
    結局はあなたと同類の「力の信奉者」が、あなたを利用しようとして集まってくるだけ。

グサグサ来る。心がズタズタにされる。

この著者の文体は簡潔で、過激で、根拠が明快で、正論で、ズバズバ切り込んでくる。

【書評】ウンコな議論(ハリー・G・フランクファート/山形浩生訳)【75冊目】

概要

ウンコな議論の正体を明らかにする。

現代社会は「ウンコな議論(bullshit)」にまみれているし、みんながそれらに騙されている。政治で、メディアで、社内会議で、ウンコな議論は繰り返されている。ウンコな議論を見破るにはどうしたらいいのだろうか?

いやそれ以前に、ウンコな議論とは何なのだろうか?

「年金未払いを謝罪しないのか?」

「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろで・・・」(小泉純一郎)

元総理大臣の有名な答弁だが、何を言っているかは意味不明なのに、論点をすり替えることに見事に成功している。ウンコな議論が何かは明確ではないが、こうして確かに、いたるところに存在することがわかる。

ウンコな議論とは、著者によれば以下のものである。

  • ウンコな議論は嘘とは違い、偽の情報を含まない
  • むしろ、発話者はその真偽に全く関心はない
  • 発話者の意図は、それを聞く人の印象をコントロールし、その場をしのぐこと
  • その目的のため、思わせぶりで、誤解を招く
  • しばしば出来が悪く、ウンコのように口から排出されただけのものである
  • 何でもその場ででっちあげるが、まるっきり嘘でないこともある

ヴィトゲンシュタイン

この本で面白いのは、各種の例示である。なかでも、ヴィトゲンシュタインのエピソードが秀逸である。