【書評】自分を見つめる心理学(加藤諦三)【76冊目】

概要

自己中心的なナルシシズムと劣等感により、「間違った生き方」をしていることに気づこう。

なんでこんなに自分のことが知られているんだ・・・と思わされる本。

「自分は何者なんだ?」をテーマにした本は多い。でも、こんなに耳に痛いことをズバズバ言ってくれる本があっただろうか。

あなたが悩むことが多いのは「愛されなかったからだ」と言う。

愛されなかったからこそ自信が持てず、周りが皆敵の中で生き残るために、能力と言う武器を磨いてきた。社会に認められ、尊重されるために。

でも、それは実は間違った生き方で、そんな生き方をしても幸せになれないということに、早く気付くんだ。

  • 自己中心性
    「こんなに頑張った自分は偉い」そんな考えには、自分しか出てこない。
    「頑張った自分がなぜ愛されないのか」これを、ナルシシズムという。
    これは本質的には自分だけおいしいところを食べよう、という考えに過ぎない。
    「頑張って支えてくれているみんな」が視界に入っていないのだ。
  • 劣等感
    「力が欲しい。力があれば、みんなが認めてくれる」力を得ても、もっと欲しくなるだけだ。
    成功者が自分を成功したと思えない現象を、偽名現象という。まさにその状態だ。
    「なぜあいつは努力しないんだ」力を求める人間は、弱者に厳しい。
    だから、みんなに認められないのだ。
    「力以外の、多様な価値観」を認められないのだ。
    結局はあなたと同類の「力の信奉者」が、あなたを利用しようとして集まってくるだけ。

グサグサ来る。心がズタズタにされる。

この著者の文体は簡潔で、過激で、根拠が明快で、正論で、ズバズバ切り込んでくる。

【書評】なぜ人類のIQは上がり続けているのか(ジェームズ・R・フリン)【57冊目】

概要

人類のIQの平均値は64年で20も上昇している。

統計学者スピアマンはIQの主要因子「g」と「s」を提唱した。gはgeneralの略で、自頭の良さを指す。あの人は何でもできる、というあれである。sはspecialの略で、特定の分野の才能を指す。

IQは世界中で上昇しているが、gは上昇していない。つまり、IQはsに属する特殊能力である。特に、IQは「抽象的概念」を操る能力である。

さらに、IQは後天的に上昇させることができる。世界はどんどん専門分化して、仕事の内容も抽象化が進んでいるし、スマホなど、抽象的概念を扱うデバイスが年々増え、日常的に要求される抽象能力も上昇傾向だから、IQが世界で平均的に上昇することは、仕事と日常生活によって鍛えられているためであろうと納得できる。

発展途上国のIQが低いのはその結果だと考えられる。つまり、発展に必要なIQが無いのではなく、発展がIQをもたらすのだ。

ただし、アメリカなどの先進国では、IQが低くても、アジア人であるだけで欧米人より知識詰め込み型のテストの成績は良くなることが分かっている。知識は、学習習慣によりIQとは別に鍛えられるのだ。つまり、

  • g
  • s
  • 知識

は異なる能力であることが分かった。