【書評】石の猿(ジェフリー・ディーヴァー)【97冊目】

概要

中国からアメリカへの密入国を手引きする殺し屋”ゴースト”と、車椅子の犯罪捜査アドバイザーライムとの闘い

映画で有名なボーン・コレクターの3作目とのこと。そうとは知らず読んでしまった。もったいなかった。のっけから、説明なしに大量の前作からと思われる登場人物が出てきて混乱してしまった。

面白い。スリルもあるけど、こういうのは正義は勝つからなー・・・と思っていると、予想範囲内で終わってしまう。どんでん返しが2度用意されているが、どちらも想定の範囲内というか・・・。

同じアメリカの小説でも、想像の斜め上を行き続ける犬の力には及ばない。

敵役の”ゴースト”は残虐非道だが、非常に魅力的に仕上がっている。タイプは違うが、ハンニバル・レクターに匹敵する魅力。悪役好きの人にはたまらないかもしれない。

【書評】シャーロック・ホームズの思い出(コナン・ドイル)【65冊目】

概要

ホームズ最後の事件を収録。

シャーロック・ホームズのラスボスはモリアーティ教授である。

モリアーティ教授は数学の天才であったが、犯罪傾向から教授職を追われ、世間から隠遁し、ひっそりと軍人の家庭教師をして過ごしている。しかし、実際には人の心を巧みに操り、巨大な犯罪組織を指先のように器用に動かし、実にロンドンの犯罪の半数を一人で起こしている。

どんなに末端の犯罪から糸をたどっていっても、モリアーティ教授にはたどり着かない。彼は最も安全な場所から、指図するだけで、膨大な殺人・詐欺・強盗事件を起こしている。

ホームズだけがモリアーティ教授の存在に気付いており、遂には滝壺にモリアーティ教授を誘い出し、心中する。ワトソンに残された遺書と綿密な捜査資料から、モリアーティ教授の犯罪組織は芋づる式に検挙され、ロンドンには平和が戻ったのだった。

ホームズはなぜ命を捨てたのか?

それは、一件一件犯罪を解決することには飽き足らなくなり、ロンドン中全ての犯罪を一網打尽にすることこそ自らの使命と考えたからだった。

【書評】虚無への供物(中井英夫)【51冊目】

概要

日本三大奇書の1つ。アンチ推理小説と言われる。

氷沼家殺人事件に挑む、4人のアームチェア・ディテクティブ。奇想天外な推理が絡み合い、事態は混迷を極めていく。しかし真の殺人者の胸に秘めたあまりにも悲痛な思いが読者の心を打ち・・・遂にアンチミステリを完成させる。

傑作なのは間違いない。読了後には複雑な気持ちになり、人にどう勧めてよいかわからなくなる。

作者は着想から完成まで10年を要しており、この作品を後世の作家が超えるには何らかの奇跡が必要だろうと思われる。推理小説の残酷さを、考えに考え抜いた出来である。

推理小説など、意外に人生で何冊も読めないものである。どうせ推理小説を読むのなら、容疑者Xの献身を読むより、すでに何十年も不動の地位を気付いている、日本三大奇書からのほうがいい。